夏になるとどこからともなく現れ、私たちを悩ませる蚊。
しかし、刺されやすい人と刺されにくい人がいるのはなぜなのでしょうか?
そもそも「なぜ蚊は血を吸うのか?」という基本的な疑問も、意外と知られていません。
この記事では、蚊の生態や行動のしくみを、科学的にわかりやすく解説していきます。
■ 刺すのは“メス”だけ!その理由とは?
まず知っておきたいのは、蚊に刺すのはメスだけということ。
オスの蚊は植物の蜜や果汁しか吸わず、人の血を吸うことはありません。
ではなぜ、メスだけが血を吸うのか?
その理由は「卵を育てるために栄養(タンパク質)が必要だから」。
血液に含まれるタンパク質を取り込むことで、より多く・より健康な卵を産むことができるのです。
■ 蚊は“匂い”や“体温”で人を見つけている
蚊が人を見つけるメカニズムは、非常に高性能です。
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二酸化炭素(CO₂):人間が吐き出す息に含まれており、これを20メートル以上離れていても感知できる。
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乳酸・アンモニア:人の汗に含まれる成分。蚊はこれを「においセンサー(アンテナ)」で探知する。
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体温:人の肌の熱を赤外線で感知する能力がある。
つまり、蚊は「匂い×体温×呼気」のセットでターゲットを探し出しているのです。
このメカニズムを利用したのが、蚊取り装置によくある「二酸化炭素発生剤」や「黒色の外装」。黒は熱を吸収しやすく、蚊に見つかりやすいのです。
■ 刺されやすい人の特徴とは?
以下のような人は、蚊にとって魅力的なターゲットになりがちです。
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体温が高い人(新陳代謝が活発)
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汗をかきやすい人(乳酸やアンモニアの濃度が高い)
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お酒を飲んだ直後の人(呼気中のCO₂が増える)
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運動直後の人(体温・汗・呼吸が活発)
特に「ビールを飲んだ後に外でバーベキュー」なんて状況は、蚊にとってのごちそうタイムなのです。
■ “プロービング行動”と呼ばれる刺す技術
蚊は皮膚に止まると、すぐに刺してくるわけではありません。
実は「プロービング(probing)」という探査行動を行い、毛細血管を見つけてから針を差し込んでいるのです。
蚊の口は6本の細い針からなっており、そのうちの1本がストローのように血を吸い上げ、もう1本は唾液を注入します。
この唾液には「麻酔成分と抗凝固成分(血が固まるのを防ぐ物質)」が含まれていて、血が固まらず、痛みにも気づきにくくなっているのです。
■ 刺された後にかゆくなる理由
蚊に刺された後の“かゆみ”は、蚊の唾液に対するアレルギー反応です。
人によって症状に差があり、「刺されたことに気づかない人」や「猛烈に腫れる人」など、体質によって大きく変わります。
この唾液は、蚊が刺すたびに体内に注入されており、かゆみや赤みは免疫反応の一種と言えます。
■ まとめ:蚊は“命がけ”で血を吸っている?
血を吸っている間、蚊は動けず無防備な状態です。
そのリスクを冒してでも血を吸うのは、卵を産むという命の営みのため。
蚊を完全に嫌う気持ちもわかりますが、その背後には自然界の精緻なしくみがあります。
次に刺されたときは、ちょっとだけ「へぇ~」と思ってみるのも悪くないかもしれません。

